人魚姫の涙
いつも大学では4人一緒だったと聞いた事がある。

顔立ちからして大学生だから、恐らく紗羅の父親の隣にいるこの人が俺の父親だろう。

俺の小さな声に、紗羅は同意するように頷いた。


「そう。成也のパパ。そして、その隣が私のママ」


白い指で2人の男女を指さす紗羅。

でも、それよりも俺の目を引いたのは――。


「これ...…母さん……だよな」


そこに写っていたのは、ニッコリと真ん中でピースをする母さんの写真。

以前母さんの昔のアルバムを紗羅と見た時には無かった写真。

だけど、思えば、大学時代の写真があのアルバムには一枚も無かった。

まるで抜き取られたかのように、一枚も。


だから、この年齢の時の母さんを見るのは初めてだった。

だけど、その姿に違和感を覚える。

瞳を揺らして困惑する俺に、紗羅は確信を持った表情で俺の顔を覗き込んだ。


「誰かに似ていると思わない?」


紗羅のその言葉に写真から目を離して、紗羅の顔を見る。

同じフワフワの栗毛。

くりくりの愛らしい瞳。

ニッコリと微笑む、その笑顔は――。


「さ……ら」


写真の女性と紗羅の顔が重なった。
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