人魚姫の涙

ありえない。

だって、どう考えてもおかしいだろ。


でも、他人の空似とは思えないほど、その笑顔は似ていた。

見れば見る程、その笑顔に紗羅の面影を感じる。

ちょうど、今の紗羅と同じ年。

大学時代の母さん。


「これって...…どうゆう」


もう頭が回らなかった。

紗羅と瓜二つの母さんの写真。

DAN鑑定で一致した紗羅と母さん。


じゃぁ、俺は?

俺の母さんは一体誰?

俺と母さんは?

本当の親子ではない?


ドクドクと心臓が痛いほど跳ねる。

呼吸が苦しくて、手が微かに震えた。


〝私達の運命の話――″


浮かんだのは、紗羅の言葉だった。
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