人魚姫の涙
「この写真を見て、私の中で心は決まっていたの」
「――」
「案の定ママとのDAN鑑定は一致しなかった。でも、成也のママとは一致した」
「いつ...…これを。母さんのDNAは」
「この家に来て、すぐ鑑定にだしたの」
「――」
「一緒に住んでいれば、採取するなんて簡単だよ」
真っ直ぐに俺の顔を見て話す紗羅。
その青い瞳は俺を逃がしてはくれず、深い深い海へ落としていく。
二度と、戻れない様に深く深く、暗い海の底へ――。
静まり返った部屋の中で、呼吸をする事も忘れる。
そんな俺の手をギュッと握って、紗羅は小さく息を吐いた。
そして、ポタリと大きな瞳から涙を一粒落とした。