人魚姫の涙
「おじさん」
重苦しい空気の中、ゆっくりと口を開く。
すると、記憶の中より老けたおじさんが瞳をこちらに向けた。
そして、懐かしむように僅かに微笑んだ。
俺の父親のような存在。
いつも優しく、時には厳しく、俺を本当の息子の様に育ててくれた。
鷹の様に鋭い目つき。
引き締まった体に、少し焼けた肌。
顔をくしゃっとして笑うその姿は、昔のままだった。
「成也。大きくなったな」
声も少し変わった気がするけど、その響きはどこか懐かしい。
大きな何かに包まれている様に、おじさんが側にいると安心した。
絶対的なもので守られている気がして。