人魚姫の涙
「何度も俺達は話しあった。駆け落ちする事も考えた。だけど、所詮大学生の俺達には仕事もなければ住む場所もなかった」

「――」

「時間だけが残酷に過ぎていき、桜と大悟は結婚する事になった」


悲劇。

愛し合っていた2人を引き裂いたのは、最も近くにいた友人だった。


「狂ってしまいそうだった、力のない自分にも、この世の中にも嫌気がさした」


きっと、俺なら耐えられない。

紗羅が友人と結婚するなんて。

ましてや、政略結婚なんて。

間違いなく、狂ってしまう。


言葉も無く、俺と紗羅は下を向く。

そして、静寂の中に落ちた声を世界の端で聞いた。


「そして、私達2人は禁忌を犯した」


悲劇の先にあったのは、やっぱり悲劇だった―――。
< 217 / 344 >

この作品をシェア

pagetop