人魚姫の涙
ニコニコと微笑みながらテーブルを挟んだ向かいに座る紗羅。
突然の再会に戸惑う俺を、恥ずかしげもなくじっと見つめている。
その姿をバレないように視界の端で盗み見るが、どこからどう見ても、さっきの人魚姫と瓜二つだ。
間違いなく、夕方に見た『人魚姫』は紗羅に違いない。
大学のみんなが言っている『人魚姫』かは分からないけど…。
「紗羅ちゃん、いつ日本に帰ってきたの? 知らせてくれればよかったのに」
「1週間前ぐらいかな。なんだか久しぶりすぎて、どこが昔住んでいた場所か忘れちゃって」
「もう18年も前だものね~」
「おばさんに声をかけた時も、半信半疑だったの。違う人だったらどうしようかと思っちゃった」
そう言って、楽しそうに笑う紗羅。
遠い記憶の中にある笑顔に、どことなく似ている。
「それまで、どこに泊まってたんだ?」
「近くのホテルだよ」
「そっか」
プツリと途切れた会話。
昔は何も考えなくてもペラペラ話してたのに、なんだか妙に緊張してしまう。