人魚姫の涙
目の前が真っ暗になった。
世界がグルグルと回りだした。
母さんの言葉が世界を崩壊させる。
嘘だ。
嘘だ。
嘘だ。
「嘘だ」
心の中に充満していた気持ちが、口をついて出てきた。
紗羅と俺が双子?
どちらも、母さんの子供?
紗羅と俺が兄妹?
パニックになりそうな俺を見て、母さんはゆっくりと立ち上がった。
そして、静かに部屋から出ていき、しばらくして何かを持って現れた。
「母子手帳よ。成也と、紗羅ちゃんの」
母さんが持ってきたのは、薄いピンク色の小さな冊子だった。
名前の欄には。
『成也』
『紗羅』
と、母さんの字で書かれている。
呆然とそれに視線を向ける俺達に、母さんは真っ直ぐな瞳を向けてハッキリと言葉を落とした。
「貴方たちは、私の子供よ」