人魚姫の涙

「成也……」


茫然とする俺に、紗羅がか細い声で話しかけてくる。

その声で我に返った俺は、やっと息ができた気がした。

ゆっくりと顔を上げて、聞きたかった事を聞く。


「紗羅の父親は」

「私だ」


俺の言葉に少しかぶせるようにして、放たれたおじさんの言葉。


「紗羅は私の子供だ」

「パパ……」


2人の父親を持つ兄妹。

これは神様からの罰なのだろうか。


「一つ気になる事があるんだ」

「なんだい?」

「俺の父さんと紗羅の母さん。2人はどうなった」


母さんと結婚した、俺の父親 大悟。

おじさんの妻である 母さんの友人 茜。

2人は俺達が幼い時に病気で亡くなっている。

2人とも。

これは偶然なのか?

それとも――。


俺の言葉を聞いて、顔を曇らせる2人。

その表情を見て、明るい過去ではない事は明らかだった。


続く悲劇の連鎖。

もう、誰も逃げる事なんてできなかったんだ。

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