人魚姫の涙

そんな恥ずかしさを紛らわすように、手元にあったお茶を喉に流し込む。

すると、目の前に座っていた紗羅が不思議そうに首を傾げた。


「成也」

「え?」


急に名前を呼ばれてドキっとした。

まるで歌を歌うかのように、話す紗羅。

綺麗な声が心を振動させる。


「どうしたの?」

「な、なにが?」

「元気ないから」

「そんな事ないよ」


焦りを奥に隠して微笑んだ俺を不思議そうな顔で見つめる紗羅。

緊張している俺とは違って、紗羅はこの何十年ぶりかの再会にも飄々とした様子でいる。


「あら? 成也緊張してるの?」


そんな中、まるで空気を読まない母親の言葉に思いきり睨みを利かせる。


「違う!」


楽しそうに笑う母さんに、食らいつく。


緊張してるかって?

するに決まってるだろっ!
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