人魚姫の涙
「もちろん大悟は怒ったわ。でも、それ以上に悲しそうだった。その顔は今でも覚えてるわ。何も言わずに涙を流し続けていた」


そう言って、声を詰まらせる母さん。

その時の光景を想像するだけで、背筋が凍る。


「それから茜にもそれを知られて、茜はショックで倒れたわ」

「――」

「私達は大切な2人を、親友とも呼べる2人を、深く傷つけてしまったの」

「でもっ! もとはと言えば大悟さんがパパ達を引き裂いたんでしょ!?」


涙を浮かべる母さんに紗羅が悲痛な叫びをかぶせる。

だけど、二人は否定するように弱弱しく首を横に振った。


「あぁ……でも、だからと言って許される事じゃない」


誰も幸せになんてなれなかった。

偽りの家族は所詮偽りで、そこに愛などなかった。


誰が悪で、何が罪なのか。

きっと誰にも分からない。
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