人魚姫の涙
「今まで黙っていた事は悪かったと思っている。でも、お前達は――」

「勝手だよね」


身を乗り出して話すパパの声を遮る声。

隣を見ると、睨みつける様にパパを見る成也がいた。


「俺達を離れ離れにしておいて、やっと再会できたのに、また引き離すの?」

「――」

「幼馴染として育てられて、再会して恋に落ちた。普通の事だよね? 普通じゃなくしたのは――2人だよ」


冷たく、まるで嘲笑うかの様に話す成也。

その声は怒っている様な、悲しんでいる様な、今にも壊れてしまいそうな、そんな声だった。


「成也...…でもね――」

「母さんも、本当は俺が憎いだろ? おじさんとの幸せを邪魔されて、幸せを壊した父さんの子供の俺が」

「違うわっ!!」

「何が違うんだよ! 父さんのせいで幸せになれなかったんだろ!? 俺は望まれた子供じゃなかったんだろ!?」

「違うっ! 違うわっ」


成也の大きな声に涙を浮かべて、必死に否定するように顔を横に振るおばさん。

何かを言いたそうだけど、声を詰まらせている。


「パパ」


おばさんの背中を優しく撫でるパパに、今度は私が声を上げる。


「私はおばさんの代わりだったの?」
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