人魚姫の涙

私の言葉に、パパは大きく目を見開いた。


「おばさんにソックリな私を、おばさんの身代わりに側に置いたの?」

「ちが……」

「だから私の顔を見ると、たまに切なそうな顔をしたの? 私の向こうにおばさんを見ていたから?」


ずっと不思議だった。

昔から私の顔を見ては、切なそうに私の名前を呼ぶパパ。

切なそうに、あの歌を歌うパパ。

――それは、私がおばさんの身代わりだったから?


「違う...…違うんだ」

「私は紗羅よ。桜じゃない」


一気に壊れた世界。

幸せだった日々は、全て偽りのものだった。


「俺は紗羅を愛してる」


動揺する2人に成也が真っ直ぐ目を見つめて、そう言った。

まるで、宣戦布告のように。


「ダメだ! 分かっているのか? お前達は兄妹なんだぞ!? こんな事許されない事なんだ」

「その言葉、そのままおじさんに返すよ」


冷たく言い放って、成也はゆっくりと立ち上がった。


「紗羅」


そして優しく私の名前を呼んで、座ったままの私に手を差し出した。

大きな手を掴むと、グイッと引き寄せられて包み込む様に抱きしめられた。
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