人魚姫の涙
「俺は何と言われようと、紗羅と生きていく」
そう言って、私の手を引いて成也はゆっくりと歩き出した。
そして、入口にかけてあったバックを無造作に肩にかけた。
「待ちなさい! どこへ行く!」
「そんなの決まってるじゃん」
ドアを開けて、2人の方に振り返った成也。
パパとおばさんも慌てたように立ち上がった。
「成也...…」
不安が増幅して、気が付いたら成也の名前を呼んでいた。
そんな私の声を聞いて、無表情だった成也がゆっくりと口角を上げて微笑んだ。
「大丈夫だから」
温かい。
優しい言葉。
その声を聞いた瞬間、不安だった心が嘘のように消えた。