人魚姫の涙

「俺は何と言われようと、紗羅と生きていく」


そう言って、私の手を引いて成也はゆっくりと歩き出した。

そして、入口にかけてあったバックを無造作に肩にかけた。


「待ちなさい! どこへ行く!」

「そんなの決まってるじゃん」


ドアを開けて、2人の方に振り返った成也。

パパとおばさんも慌てたように立ち上がった。


「成也...…」


不安が増幅して、気が付いたら成也の名前を呼んでいた。

そんな私の声を聞いて、無表情だった成也がゆっくりと口角を上げて微笑んだ。


「大丈夫だから」


温かい。

優しい言葉。

その声を聞いた瞬間、不安だった心が嘘のように消えた。


< 247 / 344 >

この作品をシェア

pagetop