人魚姫の涙
「あぁ。アイツの親父は日本を代表するIT会社の社長なんだ。だから、正真正銘の御曹司」

「お金持ちなんだ!?」

「カナリのな」


きっと紗羅が着ているこのワンピースも、どこかのブランドの物で、何万とする代物だろう。

俺が知っている中では、家にはお手伝いさんが何人もいて、こういった別荘もいくつも持っていて、カード一枚で何でも買えるって事。

俺達のような凡人と同じ高校や大学に通っているのは、親の方針らしい。

明らか浮いているけどな。


「でも、昨日行ったお家少し大きいくらいで、普通だったよ?」

「あぁ、あれは大学から近いからって親が和志の為に建てたみたいだぞ? 確か、妹の部屋っていっても洋服が置いてあるだけのクローゼット的な用途だったはずだし」

「え!? じゃぁ、あれは和志くんだけのお家って事?」

「たまに家族も泊まるみたいだけどな。本家は別にある」


俺の言葉を聞いて、目を見開いて驚く紗羅。

俺もアイツとは長い付き合いだけど、未だに驚かされる事が多い。

今回みたいに、電話一つで何から何まで準備できるんだから。
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