人魚姫の涙
ぼんやりと天井を見上げながら、これからの事を思う。

だけど、心の中でそう決めて、ゆっくりと風呂から上がった。


髪も乾かさないままリビングへ向かうが、いつもなら電気が点いているのに部屋は真っ暗だった。

不思議に思いながら声をかけるが、返事はない。


「紗羅?」


シンと静まり返った部屋に、もう一度呼びかける。

カーテンも閉め切られていて、月明りすら入ってこなかった。


寝たのか?

だったら二階の寝室か?


そう結論づけて、踵を返してリビングから出ようとした。

その時――。



「成也、誕生日おめでと~!」

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