人魚姫の涙

「え？」


突然紗羅の声が響いたと思った瞬間、真っ暗だった世界が一瞬にして明るくなる。

思わず目を覆ったが、広がるその光景に息を飲んだ。


沢山の電球が部屋の至る所に散りばめられている。

オレンジ色の淡い光に彩られ、幻想的な光景が広がる。


「成也、誕生日おめでとう！」


茫然とする俺に、部屋の中からパタパタと紗羅が駆け寄ってきた。

嬉しそうに頬を緩めて、驚く俺を満足そうに見上げた。


「紗羅...…これ...…」

「凄いでしょ！　この前倉庫でクリスマスの飾りつけを見つけてね、思いついたの。電飾を部屋中に置いたら綺麗だろうなって！」

「――」

「今日、成也の誕生日でしょ？　お祝いしたくて」


ニッコリ笑った紗羅は、そう言ってギュッと俺に抱きついた。

そして、少しだけ寂しそうな顔で俺を見上げて微笑んだ。


「何もプレゼント買えなかったから」