人魚姫の涙
その表情に胸を掻きむしられる思いだったけど、紗羅の言葉にやってしまったと思う。


「そうか! 今日、誕生日...…っ!!」


うっかりしていた。

ここに来てから日にちの間隔が曖昧だった事もあって、すっかり忘れていた。

俺の誕生日という事は、今日は紗羅の誕生日でもある。


「ふふっ、成也忘れてたでしょ? だから驚かせようと思って!!」

「めちゃくちゃ驚いた。でも、悪い...…。俺、プレゼント買ってないや」

「い~の! プレゼントなんか。成也と過ごせただけで、十分」


そう言って、背伸びをして俺の頬にキスした紗羅。

真っ青な瞳にオレンジ色の光が揺らいでいる。


「産まれてきてくれて、ありがとう成也」

「――」

「私、成也に出会えて、幸せだよ」


真っ直ぐに俺の目を見て、そう言った紗羅の言葉に胸が一杯になる。

いろんな感情が湧き上がって、目頭が熱くなる。
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