人魚姫の涙
俺を見つめるその表情は、まるで天使の様に綺麗で。

あまりにも幻想的で目が離せなかった。


幸せだった。

こんなにも胸が熱くなったのは初めてだった。

気が付いたら、紗羅を強く抱きしめていた。


「俺も紗羅と出会えて幸せだ」

「うん」

「こんなにも人を好きになる事は、きっともうないと思う」


本心だった。

きっと、この先こんなにも人を好きになる事はないだろう。

こんなにも愛おしいと思う事も。

こんなにも切なくて、泣きたくなる気持ちも。

幸せすぎて、怖い気持ちも。

紗羅で最後だと思った。
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