人魚姫の涙

「私は..….私じゃ成也を幸せにできない。夢の一つも叶えてあげられない」


悲痛な叫びは涙となって、真っ青な瞳から零れ落ちる。

その言葉に、俺は弾かれたように紗羅の手を取った。


「そんな夢、叶わなくてもいい。そんな事より俺は紗羅と一緒にいる未来を選ぶ」

「そんなの幸せになんてなれないよ」

「俺の幸せは俺が決める。俺の幸せは、紗羅と一緒にいる事だ!」


離れていきそうな紗羅の気持ちを察して、必死に声を上げる。

お願いだから、そんな事言わないでくれ。

側にいてくれ。


その言葉を聞いて、唇を噛み締めた紗羅は逃げるように視線を伏せた。

その瞬間、ポタリとシーツの上に涙が落ちる。


「成也には、世界で一番幸せになってもらいたい」

「俺は今幸せだぞ」

「それは今、現実を見ていないからだよ。夢から覚めたら何もかも違って見える。だから――…」


そこまで言って、ゆっくりと顔を上げた紗羅。

流れる涙を拭う事もせずに、真っ直ぐに俺を見て言った。



「もう、一緒にはいられない」
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