人魚姫の涙
ドクンと心臓が大きく鳴った。

頭から冷水をかぶったみたいだった。


「何言ってんだよ……。俺は何があっても紗羅といたいんだよ!」

「私達は一緒にいちゃいけないんだよ! 幸せになんてなれないんだよ!」

「そんな事っ」


勢いよく寝転んでいた体を持ち上げて紗羅の腕を掴んだ瞬間、眩暈がした。

グラリと世界が歪む。

え? と思いながら、崩れそうになった体を保った。


「――っ」


それでも、徐々に世界が歪んでいく。

頭がボーっとし出して、目がかすむ。


フラフラと制御の効かなくなった体でも、必死に紗羅の腕を掴む。

そんな俺を見て、紗羅はポツリと呟いた。


「やっと...…効いてきたみたい」

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