人魚姫の涙
「ま……て。行くな……紗羅」


嫌な予感が更に大きくなって、必死に紗羅の腕を握る。

ドクドクと心臓が早鐘の様に鳴る。

朦朧とした意識の中でも分かる。


紗羅は、俺の前から消えるつもりだ。

俺の幸せのために――。


「一人で勝手に決めてゴメンね。でも、成也には幸せになってほしいの。ずっと笑っていてほしいの」

「俺の……幸せは、紗羅といることなんだよ」

「ありがとう。でも、それじゃダメなんだよ」


ポロポロと紗羅の真っ青な瞳から涙が零れる。

そして、俺の目からも一筋の涙が零れた。
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