人魚姫の涙
「誰よりも幸せになって。それで、毎日笑って、子供とキャッチボールをして」
紗羅の瞳からは涙が絶え間なく溢れていた。
それでも、必死に笑顔を作る紗羅。
頑なに揺らがない紗羅の決心。
だけど、今この手を離したら俺は一生後悔する。
「さ……ら……頼む」
それなのに、意識とは別に徐々に世界が真っ暗になっていく。
俺の意思とは別に、瞼が閉じていく。
紗羅。
紗羅。
頼む。
行くな。
俺はお前がいないと――。
薄れていく意識の中で、ゆっくりと唇に温かいモノが触れた。
そして、優しい声が耳元で囁かれた。