人魚姫の涙

◇◆◇



「はぐれるなよ」

「うん!!」


瞳を輝かせながらキャンパスの中を歩く紗羅。

まるで子供のようにキョロキョロしながら、嬉しそうに笑っている。

その姿を見た生徒達がすれ違い様、驚いたように振り返っていく。


でも、その気持ちは分からなくもない。

真っ白な陶器の様な肌に、日本人離れしたドールフェイス。

栗色のフワフワの髪が、ピンクベージュのワンピースの上で踊っている。

まさに妖精さながらだ。


「すごいね、日本の大学って。とっても近代的!」

「そうか?」

「そうだよ。あ、ねぇあれは何!? 凄い凄い! あっちは!?」


そんな容姿とは正反対に、子供の様に瞳を輝かせてはしゃぐ紗羅。

天真爛漫という言葉が似合う。
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