人魚姫の涙
涙が止まらなかった。

紗羅から初めてもらった手紙は、永遠の別れを告げる手紙だった。


紗羅の言いたい事、分かる。

だけど、俺はやっぱり何を犠牲にしても紗羅と一緒にいたかった。

そこにしか、もう幸せを見出せないから。

俺の世界は紗羅で出来ている。

紗羅のいない世界に、希望なんてない。

他の誰かと恋をする事なんて無理だ。

俺の胸の中、こんなにも紗羅で満たされているのに。


「紗羅っ」


手が震えて、足に力が入らなくて、ストンとその場に倒れ込んだ。

現実を受け止め切れなくて、狂ってしまいそうだった。


ただ分かるのは、俺は一人だという事。

紗羅はもう帰ってこない。

永遠に。
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