人魚姫の涙
こんなに、心が押し潰されそうな気持ちは初めてだった。
こんなに胸が張り裂けそうな思いも、息ができない苦しさも。
誰が悪いのかなんて、分からない。
だから、この気持ちが一人歩きを初めて彷徨っている。
それが更に俺の心を蝕んだ。
「おまえのせいじゃない」
肩を震わす俺の背を摩って、小さな声でそう言った和志。
その温かさに、唇を噛み締めた。
「誰のせいでもない」
――…この日から俺は抜け殻になった。
その後、和志に家まで連れて行ってもらい、母さんとおじさんに紗羅の事を伝えた。
泣きじゃくる母さんと、顔面蒼白になって立ち尽くしたおじさん。
紗羅は。
消えてしまった。