人魚姫の涙
自嘲気味に笑った俺を、真っ直ぐに見つめる母さんの強い瞳。
そして、いつもの凛とした声でハッキリと告げた。
「成也。二度とそんな事言わないで」
「でも――…俺は」
「確かに、大悟を憎いと思った事もあったわ。でもね成也。大悟は真っ直ぐに私を愛してくれた。どんな時も私の見方で、私の側にいてくれた」
「――」
「それに、私を成也に会わせてくれた。あなたは私の宝物よ。もちろん紗羅も。誰よりも愛してるわ」
愛おしそうに俺の髪を撫でる母さんの手は昔と変わらない。
だけど、優しく微笑む笑顔はどこか紗羅と似ていて。
俺の目から、また一筋の涙が頬を伝った。