人魚姫の涙

第一章

人魚姫の記憶

――…ピピピピピピ。
ピピピピ。


「ん″～」


朝から騒がしい目覚ましの音に眉根を寄せる。

重たい目を閉じながら、枕元にあった目覚まし時計を乱暴に止めた。


「成也～！　早く起きなさ～い！」

「今起きた～」


母さんのいつもの朝の一声。

ちゃんと起きてるって。


ぼーっとする頭で記憶を辿る。

なんだったんだろう、あの夢。

遠い昔の記憶が夢として蘇ったのは初めてだった。

あまりにも懐かしい記憶にあれが自分だったと分かるのに時間がかかる。

――でも、確かあの子は昔隣に住んでいた紗羅だ。


ボリボリと頭を掻きながらベットを降りる。

足元には写真やアルバムがグチャグチャになって置いてある。

昨日整理しようと思って、結局諦めたんだ。

その光景を見て、今日の夢の原因が分かった。