人魚姫の涙
「変なヤツに声かけられても、ついていくなよ」

「も~子供じゃないんだから~」

「紗羅なら、ありえる」

「小さい頃、お菓子あげるからって知らないおじさんに、ついていったのは成也でしょ~」

「うわっ、懐かしい。よくそんな事覚えてたな」

「後でお母さんにすっごい怒られて、成也、ずっと泣いてたよね」

「余計な事も覚えてるな」

「私記憶力いいんだから」


そう言って、紗羅は自慢げな顔で胸を張る。

そんな紗羅がなんだか可愛くて、腹を抱えて笑った。


それが、再会してようやく幼馴染に戻れた瞬間だった。

懐かしい思い出を共有して、この子は確かに18年前に一緒に育った紗羅だと思えた。


昔もよくこうやって紗羅の手を引いて歩いた。

泣き虫で甘えん坊だった紗羅は、俺がいないと何も出来なかったから。

子供ながらに守ってあげなければと思っていたのは、今も昔も同じなのかもしれない。
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