人魚姫の涙

2人に別れを告げ、友香と並んで歩きながら来た道を戻る。

すると、先程とは少し違って女の顔になった友香が俺の顔を覗き込んだ。


「成也、最近忙しかったの? メール、あんまり来なかったから」

「あ~悪い。ちょっとバタバタしてた」


バタバタの理由は紗羅なんだけど。

でも、なんだか言い辛い。

やましい事なんて何もないけど、なんだか説明しにくいよな。

18年ぶりに再会した幼馴染と、今一緒に住んでいるなんて。

さすがの友香も間違いなく嫌がるだろうし、きっと喧嘩の種になる。


本当は話すべきなのかもしれないけど、自分の事を話すのがあまり好きじゃない。

どうして他人に自分の全てを曝け出す必要があるのか、俺には理解できないからだ。

そう思っている時点で、俺は誰かと付き合うとか、そういう事に向いてないのかもしれないけど。

それとも、まだ友香には心を許してなくて、どこかで壁を作っているのかもしれない。


「ふ~ん。そっか」

「悪い」


少し拗ねたような表情をした友香の頭にポンッと手を乗せる。

友香はこうされるのが一番好きだと、俺は知っているから。
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