人魚姫の涙
「ん~。ちょっとな...…」


聞かれたはいいけど、どう答えればいいんだ。


他に好きな子ができちゃいました~。

友香がいるのに、紗羅の事を好きになっちゃいなました~。


って、どんだけ気の多い男なんだよ、俺。

本当は話を聞いてほしかったけど、誰かに相談する事なんてない俺は出掛かっていた言葉を飲み込む。

そんな俺を見て、和志は小さく溜息を吐いて訳知り顔でこっちに視線を寄越した。


「紗羅ちゃんだろ」

「え!? 妖精ちゃんがどうしたの!?」

「雅樹、少し黙れ」


まさかの核心をつかれて、内心驚いた俺。

食べていた手がピタリと止まった。


横でギャーギャー騒ぐ雅樹の声は冷静な和志によって抑え込まれた。

伏せていた視線を和志に向けると、俺のそんな顔で全て分かったのか。


「だろ?」


不敵な笑みで笑われた。
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