人魚姫の涙

昔から、コイツは誰かと違って勘がいい。

人間観察力が優れているというか、なんというか。

まぁ、何でもお見通しなヤツだ。

だから――。


「――…あぁ」


きっと言い訳しても、バレると思ったから素直に認めた。

逃げるように視線を伏せた俺に、和志は頬杖をつきながら口を開く。


「気になってんだろ? 紗羅ちゃんの事」

「――」

「お前の顔見れば分かるよ」


そう言って、和志はチラリと友香がいる方をに視線を投げた。

つられる様に俺も視線をそっちに向けると、楽しそうに友達と話している友香がいた。


「――で。どうすんの?」

「まだ、分からない」


最近、急に芽生えたこの気持ち。

友香の事が好きだった自分は、紗羅の事を想う自分に塗り替えられていた。

自分でも驚く程、泉の様に湧き上がるこの気持ちに、制御が効かなかった。


日を増すごとに、紗羅の事が好きになっていく。

無意識にその姿を目で追って、俺に向けられる表情に一喜一憂している。

一緒に過ごす日々が幸せで、楽しくて仕方なかった。


だけどそれと同時に、そんな薄っぺらい気持ちで友香と付き合っていたのか、と分かり、酷く自分自身に幻滅した。

大切にしてあげたいと思う気持ちが無かったわけではないが、本当の恋を知った今、それは決して『恋』ではなかったのだと知った。

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