人魚姫の涙
「いただきまーす!」

「どうぞ」


ホクホクと湯気をあげるカレーライスの前で手を合わせる。

夏と言えば、カレーだろ。って成也がスーパーで言ってた。

どういう意味かよく分からなかったけど、成也が作ってくれものだったら何でも嬉しい。


「熱っ」

「ゆっくり食べろよ。火傷するぞ」


急いで食べた私を見て、成也がクスクス笑う。

端正な顔が、クシャリと崩されて少し幼さが戻る。

腕まくりした腕から、たくましい筋肉質な腕が見える。

見惚れてしまいそうなその姿に、カレーを食べるのも忘れそうになった。


思い出の中の成也は小さい頃のままだったのに。

大人になってしまっていた成也を見て、初めは少し戸惑った。

だけど、昔と変わらない所も沢山あった。


優しくて、しっかり者。

綺麗な顔をくしゃっと崩して笑う笑顔。


大好きな所は変わってなかった。

その事が、すごく嬉しかったんだ。

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