雨の庭【世にも奇妙なディストピア・ミステリー】
「りっかは、りっかのしたいようにすればいいってことだよ」
「私は、私の……?」
その中にストレートティーが注がれた。ダージリンの上品な香り。一口飲むと、水出しのまろみが口に広がり、のどを通り抜けた。
おいしいな。
本当にいったい、自分は何が不満なのだろう。何が足りないのだろう。
ようやくあの痛み、あの絶望からは脱することができたのに。ここには、怖いものは何もないのに。そのおかげで、ここまで動けるようになったのだ。まるで、卵の中にいるみたいに守られて。
「りっか、ちょっと電気消してみて。ついでに雨戸も閉めてくれる?」
「うん?」
律歌はソファから立ち上がり、言われるがままに電気を消し、雨戸をガラガラと閉めた。