雨の庭【世にも奇妙なディストピア・ミステリー】
二つ目の基地まで用意がそろってきたある日のことだった。マウンテンバイクに荷物を積んで山を登っていると、アマトのトラックとすれ違った。
「いつもこの道を通って来てるのかしら? どこから来るんだろうって思ってたけど」
「初めて見かけたけどね」
配達されるたび根気よくアマトのお姉さんに話しかけてはいたが、お姉さんはみんな心配げに優しい言葉こそくれるものの、常に一定の距離を保って、業務の枠を超えるような一歩などは決して踏み込んでこない。
まったく手応えがないので、そこからの情報取得は諦めつつある。
この道を通っているのは、新しい発見だった。
それにしてもシロネコマークの大きな荷台が羨ましい。こちらは自転車の前にかご、後ろに荷台を取り付けて、そこに荷物を山盛りに縛り付けてキリキリ走っている。
吹き出る汗をぬぐいながら、ベースキャンプ第二区に到着したときだった。
「あれっ!?」
そこに広がっている光景に、心臓が飛び出るかと思った。
「基地が……ない」
あんなに用意した調理器具や寝具や医療器具が、すべて忽然と姿を消し去って更地になっていた。