雨の庭【世にも奇妙なディストピア・ミステリー】
「み……道を……、間違えたかしら?」
首をかしげる律歌に北寺が唸る。
「そんなことないと思う。何度も来てるし」
「じゃあ……どういうことよ……?」
「ううーん……」
「く、熊かしら!?」
だいぶ深い山だ。警戒して爆竹など持ち歩いていたわけだが――動物が荷物をかっさらっていった?
「いや、だとしても、ここまで綺麗に跡形もないのは変だ」
北寺に言われるまでもなく、律歌も薄々感づいていた。
途中で珍しく、アマトのトラックとすれ違ったこと。
「……まさか」
スマートフォンを取り出す。天蔵問い合わせ窓口のページから、発信をタップ。この山の中でも問題なく通じた。
「はい。天蔵カスタマーサービス、添田が承ります」
「ちょっと! ねえ!」
受話器に向かって、大声で問いかける。
「わたしの、山の中の荷物、どっかやった?」
添田は、悪びれる様子もなくしれっと答えた。
「処分いたしました。不法投棄はせず、アマトの配達時にお出しください」
「なっ」
やっぱりだ。
天蔵によってゴミとみなされ撤去されたのだ。