雨の庭【世にも奇妙なディストピア・ミステリー】
2・ここを気に入らないわけ、ないんじゃない?
「眠い……今日のごはんなにー……?」
「ん、何って、難しいわね。いろいろよ。ほうれん草のおひたしでしょ、小鉢はーあっイクラね! エビとイクラとアボカド和え、高野豆腐と、焼き魚と、赤かぶのお漬物、それからおみそ汁とー、あと白米~っ。あちちっ、あふ、炊き立てに間に合ったわね!」
「ふあ~あ。ああ、まだ暗いな……農家の朝ってこんな感じなのかな……」
「農家ねえ……」
そんなのがいたらの話だが。
律歌は炊き立て白米を咀嚼しながら、これはいったい誰が作ったのだろうかと思いをはせた。
そしてここはどこなの? と。
席に着いて「いただきます」と箸を取る北寺。彼も少し前、仕事を早退した帰りに、昼下がりの街をふらふらと歩いていたところ、ここに自然とたどり着いたという。
この辺りに住むほかの住人も同じようなものだ。
“迷い込んできた ”
全員口をそろえてそう言う。
最近でも、迷い込んでくる人が時々現れる。ふと思い出して律歌は聞いた。
「ねえ、こないだのあの新しい人、どうなったかな?」
「ん、何って、難しいわね。いろいろよ。ほうれん草のおひたしでしょ、小鉢はーあっイクラね! エビとイクラとアボカド和え、高野豆腐と、焼き魚と、赤かぶのお漬物、それからおみそ汁とー、あと白米~っ。あちちっ、あふ、炊き立てに間に合ったわね!」
「ふあ~あ。ああ、まだ暗いな……農家の朝ってこんな感じなのかな……」
「農家ねえ……」
そんなのがいたらの話だが。
律歌は炊き立て白米を咀嚼しながら、これはいったい誰が作ったのだろうかと思いをはせた。
そしてここはどこなの? と。
席に着いて「いただきます」と箸を取る北寺。彼も少し前、仕事を早退した帰りに、昼下がりの街をふらふらと歩いていたところ、ここに自然とたどり着いたという。
この辺りに住むほかの住人も同じようなものだ。
“迷い込んできた ”
全員口をそろえてそう言う。
最近でも、迷い込んでくる人が時々現れる。ふと思い出して律歌は聞いた。
「ねえ、こないだのあの新しい人、どうなったかな?」