ふうこさんと見えない夏目くん
「……それで、頼みがあるんだけど」

「頼み?」


そう聞き返すと、彼は言いづらそうに口をもごもごと動かす。
何となくとんでもないことをお願いされるのは分かっていた。


「ここにいる夏目の、お願い、聞いてやってほしい」

「いや、見えないし、無理だって!」


やばい事に巻き込まれるのはごめんだ、
拒否の返事はすぐに出てきた。


「見える俺が通訳でもなんでもするし、俺も一緒にやる、だから、頼む!」


あぐらをかいていた彼が私に向き直り、この通りだ、と頭を下げた。
返事ができずに困っていると、少し考えたような顔をして彼は言った。


「ていうか、夏目と話す?そしたら信じる?」


えっ、とか、いやーとか、そんな言葉しか言えない私を差し置いて、彼は何も無い空間に向かって話しかけ始めた。


「夏目、お前が直接逢沢さんと話な。体貸すから」


体を貸す、とは、つまりは憑依的なアレですか?


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