ふうこさんと見えない夏目くん

佐々木くんが、お前の分だ、と椅子を勧めてくれたので、お礼を言って腰掛ける。


「人が来ないから、ここで話そうかと思って。倉庫も使われてないみたいだし、人目気にしなくていいから」


確かにここは穴場だ。
ボロボロの椅子や机の奥に入っていくと、倉庫に挟まれた空間があるなんて私も知らなかった。

まるで入ってくださいとでも言っているような場所。


「下もアスファルトだし、ごみ捨て場はきっちり整備されてるから、虫もそんなに出ないと、思う。だからここでもいいか」


顔色を窺うように佐々木くんが聞いてきて、それまで堪えてたものが一気に吹き出した。


「ふっ、!待って、佐々木くんありがとう!!」


きちんとお礼が言いたかったのに、耐えることが出来ず笑いが先に出てしまう。


「ちょ、お前なんで笑うんだよ」

「なんか意外で、佐々木くんが私の事考えて色々してくれたんだなって思うと、ちょっとおかしくて」

「……俺じゃねーよ、夏目が言うから」
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