ふうこさんと見えない夏目くん

佐々木くんが戻ってきたところで、私と彼で花火をひとつずつ持った。

「プールだから丁度いいな」

どうやら金魚花火とは、火をつけて水辺に浮かべるもののようだ。
佐々木くんが買ってきたライターを取り出し、シュッと火をつける。

「逢沢さんのやつから着けるから」

どんな花火なんだろうとちょっとドキドキしながら、花火の先を佐々木くんに差し出す。
ゆっくりと火が近づいて、花火に燃え移り、光とともに煙を上げた。

「浮かべまァァす!」

ゆっくりとプールの端に花火を置くと、しゅうう、っという音を立てて金魚が水辺を走る。

「すごい、泳いでる!」

「広いからどこまでも行くなぁ、回収大変だ」

なんて言いながらも、佐々木くんも2匹目をプールに放つ。

広いプールで全く違う方向に泳ぎ出す2匹の金魚花火、尾びれのようなオレンジ色の光がとても綺麗だった。



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