君がいない世界で生きるために

中村先生は一番仲が良かった先生で、私のことも咲乃のこともよく知っている。



「和多瀬、学校はどうした」

「自主休校」

「なんだ、サボりか」



自主休校だ。



「和多瀬は真面目な子だと思ってたんだけどなあ」

「先生、買い被りすぎ。私は咲乃に会えるから、毎日来てたにすぎない」

「出た、白雪命。そうだよな……白雪も生きてりゃ今は受験生だったもんな……」



先生は意味もなく空を見上げる。


絶対に意味はない。



「……先生は、どうして咲乃が死んだと思う?」

「どうしてって、そりゃあ事故に巻き込まれたからだろ?俺はそう聞いたけど」



先生の顔を見る限り、嘘をついているようには見えなかった。


知らないと思って聞いたから、そこまで落胆はしなかった。



「和多瀬……なにをしようとしてる?」



先生は心配の目を向けてきた。



なにを、か……



「秘密に決まっているだろう?」



そして私は問いただされる前にその場から逃げた。



やはり咲乃の元彼を探すことが一番らしい。



ネットでも見れば、それっぽい情報は出るだろうが、ネットだ。


当てにはならない。



佑真だけが頼りだな……
< 10 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop