君がいない世界で生きるために





五時前に、佑真が帰ってきた。



「で?」



食卓テーブルにお茶を置きながら、話すように促す。


これは毎日の日課のようなものだ。



だが、今日の佑真はどこか躊躇っているように思えた。



「今度……文化祭がある。一般公開もされるって」



それを聞いて、私は堂々と学校に行くチャンスだと思った。



「それで?」

「咲乃ちゃんの元彼は、暴走族のトップだったよね?」



黙って頷く。



「元、総長だと噂されている人がいる」



信じられなかった。


そうであってほしいと思っていたが、まさか本当に……



「玲ちゃん?大丈夫?」



大丈夫か大丈夫ではないかと言われれば、大丈夫ではない。



そうか……いるのか……



「佑真。その文化祭、行くよ」

「玲ちゃんならそう言うと思った」



佑真は笑顔を取り繕った。


心配されているのだろうか。



「玲ちゃんは本当に咲乃ちゃんが好きだね」

「え?」

「だって、今も昔も玲ちゃんの行動源は咲乃ちゃんでしょ?」



それはそうだが、どうして今そのようなことを言うのかわからなかった。


だが、佑真の言葉を肯定するだけで、理由は聞かなかった。
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