君がいない世界で生きるために
気弱な声だった。
佑真の性格からして、この高校が合っていないことも、パシリ的ポジションになることもわかっていた。
「そうか。じゃあ、頑張れ」
「え!?」
私は戸惑いを見せる佑真を置いて、校門をくぐる。
私の格好が功を奏したのか、生徒に声をかけられることはなかった。
色々歩き回っていたら、誰かにぶつかってしまった。
横に注意を持って行きすぎていたらしい。
「ご、ごめんなさい」
咄嗟に謝るが、返事はない。
ぶつけて少し痛む鼻を抑えながら、顔を上げる。
私よりも十数センチ高い人で、じっと私を見下ろしていた。
目つきの悪い人だ。
「あの……」
怒らせてしまったのかと、ヒヤヒヤしてしまう。
これからここに通おうかというのに、これくらいで怯えてしまうのなら、先が思いやられる。
「……こっちこそ悪かった」
低く冷たい声だった。
そして彼は私から離れていった。
彼の背中から目が離せず、私は棒立ちする。
「新城さん!」
すると、一人の生徒が私の横を通り過ぎた。
耳を疑った。
聞き間違いかもしれないと、その生徒を凝視する。