君がいない世界で生きるために
その生徒はさっき私がぶつかってしまった彼の横に立った。
私の体は動かなかった。
彼が、新城……?
佑真は「新城さんに近付けない」と言っていた。
つまり、新城という人が元総長ということになる。
あの人が、咲乃の、元彼。
あの人が。
「嘘、だろ……」
信じられない。
こんな偶然があってもいいのか。
それにしても、機嫌が悪いように見えたのは……いや、勝手な憶測だ。
そもそも、咲乃が彼氏を好きで仕方なかったのは知っているが、彼も咲乃を好きだった証拠なんてない。
つまり、今落ち込んでいる理由が咲乃だとは言いきれない。
とにかく、そんなことよりも……
「見つかった……」
見つかった。
偶然だったが、私は見つけたんだ。
いないかもしれないと思っていた、見つからないと思っていた咲乃の元彼を。
嬉しいような、憎いような、なんとも言えない感情に襲われた。
だけど、なぜか。
笑いがこみ上げてきて仕方なかった。
「これで……これで、咲乃の死の理由がわかる……絶対に突き止めるからな」
私は一人、薄暗い空に誓った。