君がいない世界で生きるために
接触
新城を見つけて、二ヶ月が経とうかというころ。
私はようやく男子校に転入できることになった。
もともと通っていた学校が近場なため、知り合いに会う可能性が高く心配したが、よくよく考えればこんな高校に好き好んで近寄る者などいない。
バレる心配はない。
あとは上手いこと新城に近付くことが出来れば……
「和多瀬、ぼーっとしてどうした。緊張でもしてるのか?」
「……まあ」
前を歩く担任の質問に曖昧に答える。
この学校で私が女だと知っているのは、佑真だけだ。
私が失敗しなければ、上手くいくだろう。
そういう意味では、緊張しているかもしれない。
そして教室に着いた。
この学校は二クラスしかないらしく、奥にも一年の教室があった。
私は担任と教室に入る。
さすがと言うべきだろうか、机は整頓されていないし、誰一人静かにしていない。
黒板も壁も落書きだらけ。
ほとんどが髪を染め、制服を着崩している。
「……予想以上」
私の独り言だって、誰の耳にも入らないレベルでうるさかった。
「悪いな、和多瀬。こんな状態だから自己紹介とかなしで。席は……」