君がいない世界で生きるために
先生は教室を見渡すが、私が座れるような席などない。
「お、相田の近くが空いてるな」
担任が指示したのは、窓際の一番前だった。
そこには佑真が座っている。
教室の中心ばかりに意識がいっていたせいで、佑真に気付かなかった。
「相田は真面目なやつだから、頼りになるぞ」
私は軽く頭を下げ、佑真の後ろの席に座る。
「玲……くん、本当に来たんだね」
佑真はぎこちなく私をくん付で呼んだ。
「嘘とでも思ってたのか」
「……玲くんならやると思ってた」
佑真は困ったように笑う。
すると、ある生徒が佑真の机を勢いよく叩いた。
一瞬静かになったが、それを合図としたように佑真の周りに多くの生徒が集まってきた。
担任はいつの間にかいなくなっている。
「なあ転入生、いいこと教えてやる。こんな弱い奴なんか頼りになんねえから」
こいつはわざわざそんなことを言うためだけに、ここに来たのか。
集まってきた奴らも、佑真を嘲笑っている。
私はさっきの仕返しというわけではないが、自分の机を叩き、立ち上がる。
男装して男のふりをしていても、体格差は当然隠せない。
私はその男よりもかなり小さかった。