君がいない世界で生きるために
「おい、聞いてんのか」
目の前の男は私の肩を押した。
あまり強い力ではなかったが、壁の近くにいたせいか、窓に背をつけた。
しかし……佑真を殴ることなんてできない。
どうすれば、違う方向に向けられる……
ああ、そうか。
こいつは私が上か下かを知りたいだけなんだ。
それなら。
「……なんで佑真なんだ。トップと戦わせて、僕が下だと決めればいいじゃないか」
すると、笑い声で包まれていたはずの教室が一気に静かになった。
私、変なことでも言ったか……?
私に喧嘩を売ってきた目の前の奴も、青ざめている。
「お前……新城がどれだけ危険な奴か、知らないのか……?」
トップは新城だったらしい。
新城はそこまで言われるような奴なのか。
ここでの力の上下関係から、佑真を底辺とすれば、あのときの佑真の言葉も頷けるが……
まあ、そんなことは置いておくか。
せっかく新城の話題が出たのだ。
情報収集に丁度いい。
「そんなにヤバいのか、新城って人」
「元々この辺で有名な暴走族のトップだった。それだけでも近寄りたくないってのに、一年くらい前に族を抜けて見境なく人を殴るようになった」