君がいない世界で生きるために
男は簡潔に教えてくれた。
新城のことを話すってだけでこのザマなら、新城を目の前にしたらどうなるんだ……
なんて、どうでもいいことを考えている場合か。
一年くらい前に暴走族を辞めて、誰彼構わず殴る、ね……
「その理由は?」
「俺が知るかよ。とにかく、新城には近付かないほうがいい」
私は自分の耳を疑った。
「警告か?佑真を殴れとか言ってたくせに」
「……もうどうでもいい」
先に喧嘩を売ってきたくせに、そいつは私から目を逸らした。
「お前と話してたら疲れる」
本当に疲れたらしく、深いため息をついた。
「バカ相手には口論が丁度いいか?」
私はからかうようにそいつの顔を覗きこんだ。
どうやら冗談が通じる奴のようで、私は乱暴に頭を揺らされた。
「転入生、名前は?」
「和多瀬玲」
「女みたいな名前だな。俺は雨宮京也」
「綺麗な名前。似合わないな」
きっかけは妙だったが、私は雨宮と打ち解けることができた。
佑真をパシリのように扱うことはよしとしないが。
「あれ、二人とも仲良くなってる……?」
戻ってきた佑真は、困惑の色を見せた。