君がいない世界で生きるために

佑真の手には三本のペットボトルがある。



「これ、買ってきました」



佑真は雨宮に一本渡すと、教室の中央に行ってしまった。


雨宮の分と、あと二人、いつの間にか離れていた人の分らしい。



「雨宮は新城に会ったことあるか?」



私の質問で、雨宮は飲んでいた飲み物を吹き出しかけた。



「お前……なに考えてんだ?」

「その危険人物とやらに用があってね」

「恨みでもあんのか?まあ、それくらい買ってるだろうけど……だからって、和多瀬みたいな弱そうな奴が会うのは……」



心配されているのか。



本当に、佑真を殴れと言っていた人とは思えない。



まあ、そんなことは置いておいて。



確かに、雨宮が言う通りだろう。


だが、うまい具合……タイミングを間違えずに咲乃の話題を持ち出せば。



「……殴られない自信があるのだよ」

「和多瀬?」

「なんでもないよ。早めに新城に会いたいんだけど、どこに行ったら会えるか?」



雨宮は固まってしまった。



「お前、人の話聞けよ!新城には会うなって言ってんだよ!」



雨宮が大声で叫んだせいで、私は教室にいるほとんどの視線を集めてしまった。
< 20 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop