君がいない世界で生きるために
文化祭で見かけたときより、恐ろしい雰囲気を漂わせている。
すると、新城が私たちのほうを向いた。
ざわついていた周りが、一瞬で静まった。
私も思わず息を呑む。
目を合わせないようにするためか、ほとんどの生徒が俯いている。
だが、目をそらすタイミングを逃した私は、新城から目が離せなかった。
私に気付いたのか、新城がゆっくりと近付いてくる。
動かなかった周りが、一気に散る。
私一人が残された。
新城は私の目の前で止まる。
「殺されるぞ……」
「あのチビ、大丈夫か……」
後ろからそんな声が聞こえてくる。
どうすればいい。
無計画に顔を出すべきではなかったな。
新城は私を見下ろす。
「……お前、文化祭のときにいたよな?」
新城は私のことを覚えていたらしい。
念のために男っぽい服装にしていて正解だった。
落ち着け……
どう持ち込めばいい……
負けない自信があると豪語しておいて、このザマか……
「……玲ちゃん!」
悩んでいたら、佑真に名前を呼ばれ、後ろに引っ張られた。
「佑真……?」
弱虫だのパシリだの言われる佑真が、私の前に立っていた。