君がいない世界で生きるために
「彼……は、まだ転入したばかりなんです。許して、ください……」
佑真は徐々に語尾を小さくした。
やはり佑真は優しい奴だ。
そして、私が思っていた以上に強いらしい。
佑真がこうして庇ってくれたことで、私は少し冷静になれた。
「佑真、大丈夫だ」
手を震わせている佑真を後ろにし、私はまた新城と睨み合う。
新城は殺意を包み隠さず出している。
雨宮たちが言っていた通り、私は命知らずに見えるだろう。
そして、火に油を注ぐようなことをしようとしていることは、重々承知だ。
だが、新城が目の前にいるこのタイミングを逃すわけにはいかない。
この好機がまた来るとは思えない。
かといって、今咲乃の話題を出すのか……?
周りにも人がいる。
ここで咲乃のことは話せないな。
「……話がある。時間をとってもらえないか?」
「ここで話せばいいだろ」
私の提案が気に入らなかったのか、新城はさっきより一段と低い声で言った。
仕方ない、話すしかないだろう。
「……白雪咲乃」
私が咲乃の名前を出すとほぼ同時に、新城は私の胸ぐらを掴んだ。
「場所、変えないか?」
もう一度提案し、私たちは屋上に移動した。